仕事、家族…つれづれ 7
男が甘い空想に浸っていたとき、目頭を押さえる先生の顔が見えた。
先生の前には、白髪が混じった杉野の姿がある。
杉野の家は子だくさんで貧しかった。
彼も学校の勉強どころではなく、朝から晩まで働き、下の兄弟の面倒を見ていた。
終戦後の貧しいひもじい時代の生活といえば、彼のことを思い出すほどだ。
学校ではいつもよれよれの服を着て、居眠りしていた。
杉野も溢れる涙を拭っている。
みながそれに気づき、がやがやしていた同窓会の座に一瞬、沈黙の時がきた。
「辛く当たってごめんね。
私が若すぎたのよ」先生のすがるような声がその中から聞こえてきた。
杉野が鳴咽を始めた。
「あなたに会って、それを詫びたくて……」「いいんです、もう。
こうして、みんなと一緒に同窓会に出られるようになったのですから」彼は今、いっぱしの商店の主人になっている。
小僧から三〇年でここまできた。
男は大学を卒業したての若い女の先生は、クラスみんなの憧れだったと思い込んでいたが、あの時、彼は先生の愛情を感じるどころか、冷たさや依枯贔屓で悩み苦しんでいたのか。
若い女教師だった先生も大学を出たての頃の自分の先生ぶりに、どれほどの反省や後悔を心の中に溜めてきたのだろうか。
同窓会は、昔のクラスメートと会えるも楽しみでもありますが、かつての恩師に会えるのも大きいですね。